さて、コードストロークが出来るようになったら次はもっと沢山のコードを弾けるようにしましょう。このページではコード構成の簡単な説明と、まず最低限覚えたいコードをご紹介します。
コードについての基礎知識
コードとは二つ以上の異なる音程の音を同時に鳴らしてできる和音です。和音を構成する音の音程差によって互いによく響きあう協和音とぶつかり合って違和感の生じる不協和音とがあります。
コードは協和音を基準に考えます。まずはドレミファソラシドの音符を見てみましょう。
ギターの指板上でのドレミファソラシドもみてみましょう。(5弦3f中心の場合)
ここでドレミファソラシドに順に番号をつけてみましょう。各番号は「度」をつけて読みます。ド→1度、レ→2度、ミ→3度、ファ→4度、ソ→5度、ラ→6度、シ→7度
これらを隣り合う音ではなく一つ飛ばしで重ね合わせると協和音が出来上がります。例えばドとミとソを重ね合わせるドミソです。これがCメジャーコードになります。
Cメジャーコードの構成音ドミソは1度、3度、5度の組み合わせということがわかります。
ではギターでもCメジャーコードの構成音となるドミソをピックアップしてみましょう。次のようになります。
これらを同時に鳴らしてみると実際の響きもメジャーな明るい音です。
コードにはこの明るい響きのメジャーコードに対し暗い響きのマイナーコードがあります。マイナーコードはメジャーコードの構成音1度、3度、5度の内、真ん中の3度を半音低くして♭3度にすると出来上がります。Cコードで言えばドミソのミを♭ミにするとCマイナーコードになります。
実際に弾いてみると3度を半音下げるだけで暗い響きになることを実感していただけるかと思います。このように明るい響きや暗い響きなどコードによるハーモニーで曲を豊に表現します。まだまだコードには種類がありますが、まずは基礎となるメジャーコード、マイナーコードを押さえられるようにしましょう。
バレー型コード①(5弦ルート)
上で解説した音の配列を同時に押さえるには人差し指のみでフレット全体を覆うバレー型コードになります。セーハ型コードとも言います。
ではこれらCメジャーコードとCマイナーコードを押さえられるよう解説していきます。
5弦ルートCメジャーコードの押さえ方
コードを構成する音で一番低い音がコードの主要な音となる「ルート音」になります。先ほどから登場しているコードは5弦3fのC音が一番低い音でルート音になるため「5弦ルートCメジャーコード」ということになります。押さえ方は次のようにします。
バレー型コードでのネックの握りは必然的にクラシカルスタイルになります。まずはルート音から押さえることを心がけましょう。人差し指でルート音の5弦3fを押さえそのまま4~1弦も押さえてしまいます。ルート音に加え1弦3fもこの人差し指が担当します。1音だけの押弦ではなく複数の弦を指一本で押さえなければいけません。上手く力を入れるには人差し指の腹(正面)で押さえるより少し親指側側面で押さえましょう。
このとき人差し指を少し上へはみ出させて使用しない6弦をミュートします↑。
ネックの裏に添える親指も人差し指の真裏に近い位置にすると無理なく力を入れられるでしょう。
つづいて4~2弦5fを押さえていきます。中指から小指3本の指を使いますが一つのフレットに収めるため写真のように上手くずらしましょう。小指の上に薬指、薬指の上に中指が少し被さる形になります。このため小指で2弦5fを一番先に押さえます。次に薬指3弦5f、中指4弦5fの順になります。
ではストロークして音を出してみましょう。鳴るべき弦にどこかの指が触れて音が詰まっていないでしょうか?5~1弦の全てが鳴っているかどうか確認するにはコードを押さえたまま1弦づつピッキングしてみましょう。音が出ない場合はその原因を確かめて改善する必要があります。
しっかり音が出るようになったら今度はコードをできるだけ素早く押さえられるように練習しましょう。一度指を離して再びコードを押さえて音を出すというのを繰り返してみて下さい。
5弦ルートCマイナーコードの押さえ方
先ほどマイナーコードの成り立ちについて説明したようにCメジャーにおける3度の2弦5fミ音を半音下げて2弦4f♭ミ音を押さえるとCマイナーコードになります。しかし、これを押さえるにはメジャーコードと比べ小指~中指のポジションが大きく変わります。人差し指はメジャーコードと変わりません。しかし中指は2弦4fの♭3度を押さえることになります。そして薬指が4弦5f、小指が3弦5fを押さえる形になります。
押さえる手順は、やはり人差し指でルート音からのバレーを第一に1弦までしっかり押さえます。ここはメジャーコードと同じです。ミュート、指のつけ方などもう一度解説を確認してください。
次はマイナー音を決定づける♭3度2弦4fを中指で押さえましょう。ここまで押さえたら残りは同時に押さえられるとよいですが難しい場合は小指3弦5f→薬指4弦5fの順でよいです。これらの手順も慣れてきたら、ほぼ瞬間的に行うことが望ましいです。マイナーコードに関しても指を離してまた押さえるのを繰り返して慣れるようにしましょう。
メジャーコードの時と同じようにしっかり音が出ているか一音ずつピッキングして確認しましょう。
バレー型コード②(6弦ルート)
ギターという楽器の構造上ピアノとは違いオクターブも同じ完全に同音であるものがいくつか存在します。5弦3fのドに関しても全く同じ音程のドが6弦8fに存在します。
では0f~12fまでのギターでのドレミファソラシドをみてみましょう。
これを踏まえると5弦3fドをルート音にしたCメジャーコードと同様に6弦8fのドを中心にした6弦ルートメジャー(マイナーも)コードを形成できることがわかります。では6弦8fドを中心に見たドミソをピックアップしてみましょう。
このように6弦ルートメジャーコードの形が出来上がりました。
6弦ルートCメジャーコードの押さえ方
6弦ルートメジャーコードも人差し指で6~1弦を押さえるバレー型で押さえることになります。人差し指での押さえ方は5弦のバレーとほぼ同じで指の腹より少し親指側の側面で押さえると力を入れやすいでしょう。
さらに確実に押さえられるようクラシカルスタイルによりネックの裏に添える親指を人差し指の真裏になるべく近づけましょう。
全弦人差し指で押さえるためミュートの必要はありませんが上の図を見ると判るように6弦8f、2弦8f、1弦8fの3音を人差し指のみで押さえる形になります。これは5弦時より押さえるべき音が1音多いので確実なバレーが要求されます。
つづいて押さえるべき音はメジャー音を決定づける3弦9fミ音でこれを中指で押さえます。それに続き小指でオクターブのド音4弦10f、薬指でソ音5弦10fを順に押さえるとよいでしょう。これらも慣れたら瞬時に押さえられるよう練習してください。
「ポジションの形」だけを見ると5弦ルートマイナーに似ていますが、6弦ルートの場合は音の配列が若干違うためこのフォーメーションでメジャーコードになります。混乱しないよう実際の響きで覚えましょう。
6弦ルートCマイナーコードの押さえ方
では6弦ルートでのマイナーコードはどのような形になるかというと3度を半音下げるとマイナーコードになるため6弦ルートメジャーの形から単純に中指を離してやればいいのです。
ただし、6弦ルートマイナーコードの場合人差し指のみで6、3、2、1弦と4音も押さえなくてはいけません。いっそう確実なバレーが出来ていることが要求されます。
バレー型コードフォームの平行移動
バレー型の5弦ルートCメジャー、マイナーと6弦ルートCメジャーマイナーのコードフォームがいかに重要かギターにおける音の構成をもう一度見直し、CメジャーとCマイナー以外のコードも押さえられるように解説していきます。
「C」以外の音がルート音のとき
バレー型コードにおいてルート音がC(ド)ではないときのコードフォームはどうなるのでしょう?例えばルート音がA(ラ)だとしたらどのようなコードフォームになるか探ってみましょう。
C以外の6弦ルートメジャーコード
では6弦5fのA音(ラ)を中心にAメジャーコードを形成する1度、3度、5度をピックアップしてみましょう。CメジャーコードではドミソでしたがAメジャーコードでの1度、3度、5度はそれぞれラ、♯ド、ミになります。(3度の♯ドを半音下げて普通のドにするとAマイナーコードになることはもうわかりますね。)
上の図をご覧いただければわかるように6弦ルートCメジャーコードのフォーメーションと全く同じです。ギターではどのキーでも(どんな音をルートにしても)1度、2度、3度、4度、5度、6度、7度の音の間隔は全く変わりません。この原理から6弦ルートメジャー、マイナーも5弦ルートメジャー、マイナーもどこがルート音になったとしてもCコードのフォーメーションのまま平行移動するだけで移動先のルート音を中心とするバレー型コードが完成します。
5弦ルートメジャー、マイナー、6弦ルートマイナーも同じ
同じように5弦ルートメジャー&マイナーコードもC、Cmコードで押さえたフォーメーションのまま平行移動するだけです。
要するにギターではバレー型コードのフォームとルート音の位置を理解するだけで全てのメジャーとマイナーコードが押さえられてしまうのです。
省略形コード
バレー型コードを基にした省略形コードを覚えましょう。バレー型を押さえやすくした簡単なものですが正しいバレー型コードを習得できていることが条件です。安易に省略形のみを覚えてしまって正しいフォームをサボると上達は望めません。
5弦ルートのバレーコード省略形
まずは5弦ルートメジャーコードにおいての省略形をご紹介します。5弦ルートメジャーコードは人差し指でのバレー以外に中指~小指までさらに3本もの指を狭い範囲で押さえます。これだとそれなりの練習を積んだ場合でも素早いコードチェンジには対応しきれない可能性もあります。そこで中指~小指の3本で押さえていたポジションを薬指一本でバレーするように押さえてしまいます。そして1弦3fのソは省略してしまいます。これなら2本の指だけなので素早いコードチェンジにも対応できるでしょう。
薬指の腹で2~4弦5fを同時に押さえます。薬指が1弦に触れてしまうと不必要な音が出てしまいます。1弦の音はミュートしましょう。薬指の間接辺りを上手く浮かせれば人差し指で抑えた1弦の音も出せますが無理をすると薬指を痛めるので1弦の音は鳴らなくても良いです。ミュートを優先させてください。
アルペジオなどで5弦ルートメジャーのトーン全てをつかう必要があるときは正しいフォームが必要です。さらに、この省略形は3度の音(Cコードの場合はミ音2弦5f)が入るため5弦ルートメジャーのみでしか使えません。5弦ルートマイナーコードは省略せずそのまま押さえる方が良いでしょう。
パワーコード
バレー型フォームにおいては音をさらに省略したパワーコードがあります。省略するのは3度の音です。そのため構成音は1度と5度のみになります。
押さえ方は5弦ルートメジャー省略形の薬指を少し上にして3度音がある2弦に触れないようにすると良いでしょう。
4弦3弦は中指ではなく薬指と小指2本で押さえても良いです。また、パワーコードなのでオクターブのルート音も省略して5弦ルート音(人差し指)と4弦5度(小指または薬指)の2音のみでも良いです。この場合は一層低音重視の音使いになります。
メジャー、マイナーを決定付ける3度が省略されるということはメジャーコードの省略形としてはもちろんマイナーコードの省略形としても使えます。
3度がないため同じフォーメーションのまま6弦ルートコードもパワーコードにできます。
ハードなロックではパワーコードを重宝するので必修です。ただし歌重視の楽曲ではパワーコードだと重すぎたり豊なハーモニーが表現できません。まずは正しいコードフォームを押さえられることを前提にしましょう。
各種ローコードと押さえ方
ここからはギター演奏で重要なローコードの押さえ方を解説していきます。ローコードとは0fいわゆる開放弦を利用したコードフォームです。バレー型コードにおける人差し指の役割を開放弦が担う仕組みになります。開放弦を利用したローコードはギターの”鳴り”をより一層活かせるため弾き語りなどに代表されるコードストローク、アルペジオでのプレイをはじめとして多用されます。バレー型コードフォームと共に超必修です。確実に習得しましょう。
Eメジャーローコード
図のように押さえるとEメジャーのローコードになります。6弦がE音(ミ)でルート音となりますが、よく見ると開放弦のナット部0fが先ほど解説した人差し指のバレーにあたります。基本的にはバレー型6弦ルートコードと同一のものと言うことになります。
Emローコード
何度も説明したようにメジャーコードの3度を半音下げて♭3度にするとマイナーコードになります。よってEメジャーローコードの3度を押さえていた人差し指を離せばEmのローコードとなります。
Aメジャーローコード
Aローコードは5弦開放A音(ラ)をルートとしたコードです。こちらもEローコードと同じように開放弦0fが人差し指のバレーにあたります。Aローコードは5弦ルートなのでバレー型5弦ルートコードと同じものです。図とは違い2~4弦を薬指、中指、人差し指にしても良いでしょう。6弦は基本的に使いません。親指で軽く触れてミュートしましょう。
Amローコード
同じように3度を半音下げた形がAmローコードになります。Amも6弦は親指でミュートしましょう。
Cメジャーローコード
今までとは全く違ったシェイプですね。実はこの形も5弦ルートコードシェイプの内の一つですがコードのバリエーションはまた後に解説いたします。今回はこのCメジャーローコードのポジションを暗記してしまいましょう。このコードでも6弦は基本的に使用しないため親指でミュートしましょう。
Gメジャーローコード
Gメジャーローコードはいかにも開放弦らしいシェイプと鳴りを持っています。2~4弦の開放弦を利用するため5,6弦を押さえる人差し指、中指で触れてしまわないよう上手くアーチを作りましょう。
Dメジャーローコード
Dローコードは今までと違い4弦にルート音があります。5,6弦は使わないのため親指でぐっと握り込むようにミュートする必要があります。
Dmローコード
こちらはDmローコードとなります。Dメジャーローコードのときとは指の位置が変わるので注意しましょう。
これらのローコードはギター演奏においてとても使用頻度の高いものです。必ず弾けるようにしましょう。初めのうちは押さえやすい指から一本づつ押さえて鳴らせれば良いです。しかし、最終的にはどれもほぼ同時に一瞬で押さえられるようになる必要があります。後にコードチェンジ練習用のフレーズも用意します。どのコードも瞬時に押さえられたら合格です。
ご紹介したコードフォームはギターでは超必須です。それぞれ確実に押さえられるように練習しましょう。初めての方にとっては同時にいくつもの音を押さえる事は困難なものです。ギターの難しさを味わう最初の壁かもしれません。しかし、これも慣れるしかありません。練習していけば必ず出来るようになります。音が出た喜びを実感できれば、それもなかなかの才能です。ゆっくりでいいので焦らず練習していきましょう。